連続被害者(Serial Victim)とは

CHARMSの無料相談を始める前から、つまりは2016年、NPO法人M-STEPのプロジェクトとしてSTOP国際ロマンス詐欺!のフェースブックグループで注意喚起と相談の活動を行っていたころから、2回目・3回目と繰り返し相談に来られる被害者の方々がおられました。このように何度も犯罪の被害に遭われる方々のことを、Serial Victim、連続被害者といいます。

Serial Victim(連続被害者)とは

 Serial Victim(連続被害者)とは、何度も詐欺や犯罪の被害に遭う人のことです。このような被害者は、詐欺の手口を知らないことや、詐欺に対する脆弱性が高いことが特徴とされています。特に高齢者や特定の社会的・心理的特性を持つ人々が該当することが多いといわれています。(上野 et. al. 2023)

 詐欺に遭いやすい特性としては、詐欺の手口に対する知識不足や、他者を信じやすい性格などが挙げられます。また、詐欺被害を経験したことがある人でも、その後も詐欺に対する脆弱性が低下しないことが多いとされています。

Serial Victim(連続被害者)のプロファイル

 CHARMSの前身であるNPO法人M-Stepのプロジェクト「STOP国際ロマンス詐欺」で2016年以来お受けしてきた国際ロマンス詐欺に関するオンラインの無料相談での経験から、何度も被害に遭われるSerial Victimの方々に以下のような特徴がみられました。

  1. 情報不足:
     詐欺の手口やその背景についての知識が不足しているため、新たな詐欺手法に対して脆弱になります。たとえば過去の被害が「兵士を装う相手による戦場からの小包」であれば、その手口なら見破られるかもしれませんが、次に来るアプローチがビジネスパーソンを装う相手による偽銀行や小包詐欺を少し内容の変わった別の手口になると、それを詐欺だとは思えず、相手を信じてしまう可能性もあります。
  2. 人を信じやすい性格:
     連続被害を受ける方には、他者を信じやすく、疑いを持つことを避ける傾向の方もおられます。そのため、詐欺師の説得に応じやすい傾向を持ってしまいます。 

     たとえばSNSの「被害者のコミュニティ」で誰かがアプローチしてきて「詐欺被害者を助ける活動をしています。あなたの被害金を取り戻しますよ」と言ってくるとします。騙されやすい被害者の方であれば、「被害者のコミュニティに入っている」ということだけで「相手も被害者で信用できる」と信じてしまうかもしれません。実際、セキュリティの甘い任意の被害者団体には詐欺師が潜んでいることは少なくありません。

     別のケースでは、詐欺師のSNSのプロフィールに「信心深い、うそをつかない」などと書いていたり、チャットで「キリスト教徒です、うそは嫌いです」と自称していたりすることで、被害者は相手がその言葉通りの人物と信じてしまうのです。
  3. 社会的・心理的な孤立:
     高齢者や社会的に孤立している人々は被害を受けやすく、サポートを受けにくい状況にあります。オンラインの詐欺に騙される方々の中には、独身者やシングルペアレントがおり、他に相談ができる相手がいないという物理的な状況が存在するかもしれません。また、既婚者などで誰かに相談することで「秘密の関係」がバレてしまうことを恐れ、一緒に暮らす家族に相談ができないということもあるでしょう。
  4. 過去の被害経験から学ばず、次は大丈夫と自信を持つ:
     過去に詐欺被害を受けた経験があるにもかかわらず、その経験を活かして新たな詐欺を防ぐことが難しい場合があります。最初に挙げた「情報不足」の場合は微妙に変化した「新たな手口」が見破れないわけですが、過去に被害経験があって全く同じ手口にまた騙されるというケースは、過去の被害経験から学んでいないのです。

     これは、他の認知的な要素もあると考えられますが、被害届を出した後で被害経験者は「次は大丈夫」という自信をもってしまい、詐欺に対する脆弱性が低下しないため(上野 et. al. 2023)、同じ手口で会っても次は信じてしまうものと思われます。

Serial Victim(連続被害者)であることに気づいた人やその家族が取るべき対策

 もしあなた自身がSerial Victim(連続被害者)であることに気づいたり、或いはあなたのご家族が連続被害者であったことを知った場合どうすればよいのでしょうか? いくつか提案できる対策を挙げます。

  1. 手口に関して知識と応用力をつける
    詐欺の手口やその特徴についての知識を増やすことが重要です。詐欺に関する情報を定期的に学ぶことで、被害を未然に防ぐことができます。
  2. リアルのコミュニケーションできる相手に相談ができる環境をつくる
    家族や信頼できる友人と定期的にコミュニケーションを取り、怪しい連絡や取引について相談する習慣をつけることも大切です。そして異なる意見に耳を傾けるようにします。
  3. 防犯対策の実施
     家や車のドアを施錠することに対応するものが、SNSのプライバシー設定や、メールなどでの見知らぬ人との接触を避けるための対策を講じることに相当します。SNSであればプライバシーの設定のできる機能があります。メールはソフトウェアによりますが、最近のメールは設定次第で怪しいメールを自動的にスパムに入れてくれます。
  4. 断ることを恐れない
     相手の誘いを断るための力をつけることも大切です。たとえばなかなか断れないというのは、「相手の人格を否定してしまうのが嫌だから」というやさしい気持ちからくるものかもしれません。しかしSNS型詐欺というのは組織犯罪です。断ることは人格否定にはならないので、罪悪感を感じる必要はありません。
  5. 心理的サポートを受ける:
     被害に遭ったことによる心理的な影響を軽減するために、カウンセリングや心理的サポートを受けることも考慮すべきです。被害者の心理的な健康を保つことは、再度の被害を防ぐためにも重要です。また、連続的に被害を受ける方は詐欺被害以外の問題を抱えている可能性もあるので、専門家のアドバイスも必要となるでしょう。あなたが被害者のご家族であれば、一度家族問題のカウンセラーの話を聞いてみようなどと言ってカウンセラーとの面談に誘ってみましょう。

これらの対策を講じることで、Serial Victimとしての被害を減らし、安心して生活できる環境を整えることが出来るかと思います。被害を防ぐためには、個人の努力だけでなく、社会全体での支援と理解が必要です。

参考文献:
上野 大介 et. al. (2023). 特殊詐欺等の消費者被害における心理・行動特性. 消費者庁新未来創造戦略本部国際消費者政策研究センター リサーチディスカッションペーパー

(文章:武部理花)