騙される心理、確証バイアス!行動経済学で斬る国際ロマンス詐欺

1.概要

人は自分が信じていることは正しいのだと思いたい傾向にあります。人は見たいものだけ見て、聞きたい子度だけ聞いて、信じたいことだけ信じるという思い込みのことを確証バイアスと言います。

確証バイアスそのものは、人間に備わった機能で、必ずしも悪いものではありません。周囲にあふれるたくさんの情報の中から自分にとって大切な情報だけを取り出すことは常に間違いとは言えません。

例を挙げましょう。あなたはお子さんの学校の運動会に来ています。運動はそれほど得意な子ではありません。でも両親に自分が走る姿を見てもらいたいと思っています。子供の徒競走がはじまりました。一番にならなくても自分の子供が走る姿こそが最高に感じるのではないでしょうか。走った後で親を呼ぶ子供。たくさんの生徒たちの中から親は自分の子供の声を聴き分けます。親にとって大勢の子供がいる中で自分の子供が走る姿が最も素晴らしいものなのではないでしょうか。

一方で、確証バイアスは企業や国や個人を破滅に導いてきました。例えばコダックはフィルムカメラが衰退することはないと信じて、富士フィルムなどが他の事業に注力するようになったときに後れを取りました。同様のことが日本の携帯電話業界でも起きた結果、日本の携帯電話は衰退してほとんどのユーザーはアメリカや韓国のスマートフォンを使っているのではないでしょうか。

信じたいものだけを信じるというのは実は危険な心理特性でもあるのです。確証バイアスは真実を受け入れようとせず、自分の信じたい情報だけに目を向けてしまうのです。良いと思う情報だけ受け入れ、悪い情報をシャットアウトすることで、重要な決断をするときに破滅をもたらすことがあるのです。

2.国際ロマンス詐欺における確証バイアス

確証バイアスは、「国際ロマンス詐欺」でも見られます。国際ロマンス詐欺被害者は交際相手(実は詐欺師)を本物であると信じています。そこに親族や友人がその信じていることに反する意見をするとそれをなかなか受け入れられなくなります。曖昧な証拠を自分の都合の良いように解釈することもあるので、これはマイサイドバイアスとも言います。

マイサイド・バイアスの例を挙げると、国際ロマンス詐欺では犯人は英語圏の人間を装ったり、日本人を名乗ったりすることがよくあります。英語の発音がおかしい、日本語の使い方がおかしいと感じて詐欺師に質問を投げかけると、詐欺師はそれらしい理由を説明してきます。例えば英語の発音が悪いのはアフリカ系の乳母の影響だとか、母親がメキシコ出身だなど。日本人を装っているのに日本語が下手であることを指摘すると、海外生活が長、日本語を忘れてしまったともいうかもしれません。被害者は自分の相手を信じたいので、そのような言い訳でも信じてしまいます。そうすると重大なこと…英語圏の出身を名乗っている相手役がアフリカ人の発音であることや、日本人を名乗っているが日本語ができず実は中国語が得意であるといった情報を見逃してしまうのです。

3.確証バイアスを回避するには

SNSなどで知り合った、会ったことのない相手との交流を深めている時に確証バイアスを避けるにはどうすればよいでしょうか。疑いを持つような事柄が観察されたら、それが間違いであるという証拠を探すのではなく、疑ってかかり、反対意見を探してみることです。相手の英語がおかしい。理由は乳母がアフリカ人だったからという言い訳に対して、反対意見を考えてみる。アメリカで生まれ育ったという人物の乳母がアフリカ人であるというだけで子供の英語はそこまで訛るでしょうか。もし、信じたいと思っていることだけを信じようとしている自分がいるならばそれは確証バイアスに囚われてしまっているわけで、それは詐欺被害への一歩となってしまうのです。

参考動画:

中川先生のやさしいビジネス研究「行動経済学5」組織と人を破滅に導く、確証バイアス

投稿者:武部理花