騙される心理、ハロー効果!行動経済学で斬る国際ロマンス詐欺

1.概要

人が何かを判断するときに、目立つ特徴に引きずられて他の特徴への正当な評価を怠ってしまうことがあります。これをハロー効果といいます。ハローとは、後光のこと。例えば広告でイケメン俳優があるドリンクをアピールしているとします。その飲み物は、飲みすぎると太るかもしれません。しかし、イケメン俳優が「美味しい」といっておいしそうに飲むCMを見ると、消費者にはそれだけでその商品は良いものに思えてしまう。このように、一つの評価を全体評価とみなしてしまうのが、ハロー効果です。

ハロー効果にはポジティブなハロー効果とネガティブなハロー効果があります。たとえば、ある会社の面接に、2人の学生が来ています。一人は外見が良く身だしなみもきちんとしている好青年。もう一人は実験室からそのまま来たようなヨレヨレのスーツを着て、外見もすぐれません。面接官は服装と身だしなみの良い学生のほうが好感をもてると感じると、その学生のマイナス面(例えば成績が悪い)を無視して過大評価してしまうかもしれません。これがポジティブなハロー効果です。一方、ヨレヨレのスーツを着てさえない感じに見える学生のネガティブな外見に囚われて、実は非常に優秀な応募者を見逃してしまうこともあるかもしれません。これがネガティブなハロー効果です。

ハロー効果としてよく見られるのが、外見、経歴・学歴、肩書、影響力のある人のレビュー、やさしくされた経験などです。実はこのハロー効果、国際ロマンス詐欺だけではなく詐欺犯罪全般で犯行グループが活用しています。今回は、ハロー効果について解説しましょう。

2.ハロー効果の例

(1)外見

国際ロマンス詐欺で、詐欺師がプロフィールに使う写真は当然ですが本人ではありません。詐欺師はたいていの場合、男女ともにルックスの良い人、ルックスは悪くてもお金持ちそう・地位が高そうに見える人、良い人に見える人の写真などを好んで使います。詐欺師が使うSNSやデートサイトのプロフィール写真のインパクトは大きいものです。なぜなら被害者は相手をその写真の人として認識するからです。写真の持つ好印象が、相手を「感じの良い人」という評価につながります。

(2)経歴・学歴

詐欺師がSNSなどで使うメインキャラ(被害者の恋人役)は、ハーバード大学やオックスフォード大学、あるいは軍の士官学校卒など、高い学歴を装う人物が少なくありません。そのような学歴の人なら信頼できると考えてしまう人もいるでしょう。また、軍の高官や政治家の写真を使い、その人自身であることを名乗ることもあります。そのような経歴の持ち主なら信頼できると考える被害者もいるでしょう。

(3)肩書

そしてもう一つ、大きな効果を及ぼすのが、サブキャラの肩書です。たとえば、休暇を申請する相手が恋人役の人物の上司で、軍の最高司令官(実在の人物の名前を使用することがしばしば)。税関で差し押さえられた荷物について連絡してくる配送会社の人というのが、配送が会社の役員クラス。或いは、お金が引き落とせない偽オンラインバンキングでカスタマーサービスに連絡するとメールをしてくるその銀行の頭取。そしてそれらの「偉そうな人」は肩書だけでも後光がさしていますがついでに英語で言うと大声で話していることを示すような「すべて大文字」の文章でメールを書き、そして偉そうな肩書を自分の署名にも書いてきます。そんなメールを受け取ると、人によっては本当に偉い人からメールを受け取ったのだと思ってしまうかもしれません。

(4)やさしくされた経験

 詐欺師がお金を奪う段階になると、性格が一変して荒々しくなることもあります。被害者が躊躇していると脅してくるかもしれません。しかし、「関係構築」している段階で「やさしくされた」という記憶を持っていることで、相手の言うことに好感を持ち続けるでしょう。

(5)影響力ある人のレビュー

 被害者が詐欺師に疑いを持ち始めても、なかなかそのことを周囲に相談できないでいるかもしれません。疑いを持ち始めたことは、犯行グループのほうも被害者の言動から察知できるでしょう。時として詐欺師は第三者、例えば意のままに操れる別の被害者や共犯者を使って、被害者に「この人は本当に信頼できる。私は実際に彼/彼女に会っている」といったことを伝えさせることもあります。この第三者の証言がきっかけで、詐欺師を信じてしまう方もおられるかもしれません。

3.ハロー効果に囚われないためには

ハロー効果によって形成された詐欺師に対する評価を棄てるというのは被害者にとっては非常に困難なことであることはわかります。

ここで私たちが、「先入観や思い込みを棄てましょう」「第三者(例えばアドバイスしてくれるリアルの友人や親族)の意見を聞いてください」「客観的な事実(たとえば相手の英語の発音がアメリカ人らしくない、時差を考えるとこの時間に起きているはずはない等)をしっかり考えてみましょう」などと言ってもなかなかそれを受け入れられないものかもしれません。

もしあなたが詐欺被害者で、何らかの疑念を相手(実は詐欺師)に持ったことがきっかけでこのブログを見つけたのであれば、あなたのこの行動は正しいです。この記事を見つけてくださって、とても嬉しいです。このサイトにある記事(第三者の意見)がきっかけで詐欺師への送金をやめたり、相手をブロックしたりすることができたなら、私たちのこのような活動がお役に立てたのだと言えます。

そして、オンラインの友人だけでなく、リアルで会える友人や家族・親族にも相談してみてくださいね。そして、私たちのLINE無料相談も是非ご活用ください。そうすることで、詐欺師によるハロー効果の影響を少しずつ弱めてゆきましょう。

参考文献

安倍誠(2021).サクッとわかるビジネス教養 行動経済学. 新星出版社

ハワード・S.ダンフォード(2020).図解で理解 行動経済学入門. FloW ePublication

投稿者:武部理花