1.概要
一度詐欺被害に遭うと、被害者の情報は様々な犯罪グループに出回ると言われています。
実際、以前にご相談いただいたある被害者の方は、インターネットを通じて「FBI」や「国際弁護士」などを名乗る人物がコンタクトを取ってきて、捜査をする、お金を取り戻す等と言った話をしてきたそうです。また、SNSなどで「自分は国際詐欺の被害に遭ったが、お金を取り戻せた」等と言って近づいてくる人物も報告されています。
詐欺被害者は犯人からお金を取り戻したいと思っています。そのため、何らかの形でお金が返ってくるという話は被害者のニーズとウォンツにマッチしたものです。そのような傾向に付け込んでくるのが、リカバリー詐欺、つまりお金を取り戻すことをほのめかし、さらにお金がだまし取られるという詐欺です。
今回はリカバリー詐欺について解説します。
2.リカバリー詐欺の手口
リカバリー詐欺は、被害者が共感を持てたり、頼りにしやすい立場の人物を装い、信頼関係を築きます。そして、捜査費用や交渉費用、偽銀行への手数料など、様々な理由でお金を請求してきます。
(1)被害者を装って近づいてくる
メールやメッセージアプリ、あるいはSNSなどを通して「同じ国際ロマンス詐欺被害者のコミュニティに参加すると、「お金を取り戻せたので、その経験をあなたに教えてあげる」といって被害者を名乗る人物が近づいてきます。そのような人物が被害者支援コミュニティの主催者である場合もあります。
(2)公的機関や捜査機関、国際弁護士などを装って近づいてくる
ナイジェリアのEFCC(Economics and Financial Crimes Commission)や、FBI、インターポール、私立探偵、国際弁護士などを名乗る人物からのコンタクトも警戒すべきです。コンタクトを取ってくる人物は組織の中で決定権を持つ偉い人を名乗り、もっともらしいことを書いてきます。しかし、頼んでもいないのに海外の公的機関からコンタクトを取ってくることなどありえません。
その助けを差し伸べる機関による捜査や支援を受け入れると、捜査費用や交渉費用、手数料など様々な理由でお金が請求されてゆきます。被害者はお金が戻ってくることや犯人が逮捕されることを期待してお金を払い続けるかもしれません。それが罠なのです。
実際に日本人被害者で本物のナイジェリアのEFCCを通して一部の被害金額を受け取れたケースがありますが、この場合その被害者の方が証拠を揃えて自分で警察やEFCCにコンタクトをとったものであり、EFCCから積極的にコンタクトを取ってくることはあり得ません。そして、どうしてそのような海外の機関や探偵・弁護士といった個人があなたの連絡先を知ることができたのかを疑いましょう。
(3)合法的な手段による二次被害
詐欺被害を受けた人が、警察はあてにならないということから探偵事務所や弁護士に助けを求めることはよくあるかもしれません。実際、国際ロマンス詐欺を専門に扱うという弁護士事務所もあり、Googleの検索トップに表示されます。
しかし、注意すべき点があります。まず、「交渉してお金を取り戻せる」という話が出た場合それが何に言及しているかということです。
振込先の口座凍結とそれに付随する様々な手続きは自分で出来ます。高いお金を払って弁護士や探偵に依頼するレベルのものではありません。
犯人に実際に交渉してお金を取り戻すという方法をとっているという場合、実際にお金を取り戻した被害者が受け取ったお金は誰が振り込んだのでしょうか? 詐欺師は自分からお金を出しません。高い確率で、別の被害者が振り込んでいます。そうすると、あなたが受け取ったお金は別の被害者がだまし取られたお金ということになります。
3.まとめ
国際詐欺の被害でお金が返ってくるということはほとんど期待できません。
(1)お金が戻ってくるという話が来たら、間違いなくリカバリー詐欺です。外国のお役所や国際弁護士などが向うからやってくることはありません。うまい話はあり得ないということを覚えておきましょう。
(2)振り込め詐欺救済法に基づいて銀行や警察に連絡することで振込先の口座が凍結できます。高いお金を払わなければサービスを受けられないところに依頼する必要はありません。
(3)詐欺師との交渉でお金が戻ってくるという場合、お金を振り込んだのは詐欺師ではなく騙されている別の被害者です。それを受け取ってしまったら、あなたも犯罪者です。
投稿者:武部理花