A Study on Inpersonate Online Ads: Investment Fraud on Meta in Japan as a Case
デジタル空間上のなりすまし広告の実態把握と検知手法の検討
澁谷 遊野、中里 朋楓
要約
この論文は東京大学の澁谷 遊野先生と中里 朋楓先生の研究で、2024年3月から4月の1ヶ月間にMeta(Facebook/Instagram)上で掲載された広告を分析した結果、2,141件の著名人なりすまし広告が特定されました。そのほとんどがLINEという閉鎖的なチャット空間へユーザーを誘導しており、プラットフォーム側が削除を行っても、類似のコンテンツが別のアカウントから繰り返し投稿される実態が浮き彫りになりました。本研究は、広告がリンクしている外部URLのネットワークを分析することで、従来のルールベースでは検知できなかった詐欺広告を効率的に特定する手法も提案しています。巧妙化するデジタル空間の詐欺に対し、プラットフォーム事業者のデータ開示と、技術的介入の必要性を論じた重要な一石です。
研究方法
本研究では、Metaの広告ライブラリAPIを用い、2024年3月21日から1ヶ月間に日本国内で掲載された「投資」関連の広告データ(9,439件)を収集しました。 分析には、「量的アプローチ」と「質的アプローチ」を組み合わせています。まず、正規の広告掲載を行わないと公言している著名人26名のリストを作成し、形態素解析を用いて広告文やアカウント名からなりすましを抽出しました。さらに、広告内の画像や動画における著名人の使用状況を目視で確認し、その特徴(リターンの強調、急かす文言、クリックベイトなど)を分析しました。また、広告がリンクしている外部URLの共通性に着目したネットワーク分析を行い、ルールベースでは漏れてしまう詐欺広告の追加検知を試みました。
この研究で明らかになったこと
分析の結果、投資関連広告の約22.6%が著名人のなりすましであり、その99.8%が最終的にLINEへ誘導していることが判明しました。 特筆すべきは、詐欺広告の「生存戦略」です。なりすまし広告の98.4%は掲載期間が1日以下と極めて短く、プラットフォームの審査や通報から逃れるために、短期間で大量のアカウントから類似の広告を繰り返し投稿する「いたちごっこ」の状態にあります。 また、外部URLの共有関係を分析したところ、なりすまし広告で使用されているURLを、子育て中の母親をターゲットにした別の詐欺広告も共有しているなど、背後にある詐欺グループのネットワーク的繋がりも示唆されました。生成AI(ディープフェイク)を利用したと思われる動画広告も確認されており、手口の高度化が進んでいます。
この論文の社会への貢献
本研究は、単なる注意喚起に留まらず、以下の3点で社会に大きく貢献しています。 第一に、個人のリテラシーに依存した対策の限界を指摘し、プラットフォーム事業者が保有するデータの開示と、第三者による評価の必要性を理論的に裏付けた点です。 第二に、広告そのものの内容だけでなく、「リンク先URLのネットワーク」を利用した新たな検知手法を提示したことで、今後のサイバー犯罪対策に具体的な技術的指針を与えています。 第三に、被害が多発しているLINE誘導の実態を可視化することで、プラットフォームを跨いだ情報流通のメカニズムを解明し、より実効性の高い法規制や対策の議論に貢献しています。
| タイトル | A Study on Inpersonate Online Ads: Investment Fraud on Meta in Japan as a Case デジタル空間上のなりすまし広告の実態把握と検知手法の検討 |
| 類別 | カンファレンス論文 |
| 筆者 | 澁谷 遊野(東京大学大学院情報学環)中里 朋楓(東京大学大学院学際情報学府) |
| 雑誌名 | 社会情報学会大会研究発表論文集 |
| 発行者 | 一般社団法人 社会情報学会 |
| 発行日 | 2024/09/14 |
| 巻数・ページ | 2024巻 |
| 言語 | 日本語 |
| URL | https://www.jstage.jst.go.jp/article/ssiproceedings/2024/0/2024_82/_article/-char/jahttps://doi.org/10.14836/ssiproceedings.2024.0_82 |
| Cite | 澁谷, 遊野., & 中里, 朋楓. (2024). デジタル空間上のなりすまし広告の実態把握と検知手法の検討:Meta におけるなりすまし投資広告を事例として. 社会情報学会大会研究発表論文集, 2024, 82–87. https://doi.org/10.14836/ssiproceedings.2024.0_82 |


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