Patterns of online repeat victimisation and implications for crime prevention(日本語直訳:オンラインにおける反復被害のパターンと犯罪予防への示唆)
Sara Giro Correia
要約
本記事では、英国スウォンジー大学法学部のサラ・ジロ・コレイア(Sara Giro Correia)氏による研究をご紹介します1。本研究は、ウェールズ地方で報告された1万件を超えるオンライン詐欺・コンピュータ犯罪のデータを定量的に分析し、「同一人物が何度も被害に遭う(反復被害)」パターンを調査しました。分析の結果、高齢者ほど反復被害に遭いやすいこと、次の被害も最初と同じ種類の手口である確率が高いこと、そして最初の被害から「2週間から1ヶ月以内」に再被害のリスクが最も高まることが明らかになりました。この結果は、被害直後の迅速なサポートや介入が、連続する犯罪から人々を守る上で極めて重要であることを示しており、支援者にとって非常に示唆に富む内容です。
研究方法
本研究は、サイバー空間における詐欺およびコンピュータの不正使用(F&CM)に関して、同一人物が繰り返し被害に遭う「反復被害」の実態を把握することを目的としています5。調査サンプルとして、英国ウェールズ地方の警察管轄区において、2014年10月から2016年9月までの2年間に個人の被害者から報告された10,001件の犯罪レポートが使用されました。
手法としては、集められた大量の行政データに対し、決定論的および確率的な「データリンケージ(名寄せ)」技術を用いることで、匿名性を保ちながら「同じ個人の被害者が報告した複数の事件」を紐付けました。そして、得られた反復被害者のデータを、1回限りの被害者のデータと比較する二変量統計分析を実施しています。
この研究で明らかになったこと
本研究によるデータ分析から、被害者保護に直結する以下の重要な事実が明らかになりました。
- 高齢者ほど反復被害に遭いやすい: 1回限りの被害者(中央値50歳)に比べ、複数回被害に遭う反復被害者は年齢が高い傾向(中央値57歳)にありました。性別(男性がわずかに多い)や人種による統計的な大きな差は見られませんでした。
- 「2週間~1ヶ月以内」が最も危険な期間: 連続する被害の発生間隔を調べたところ、事件と事件の間隔は中央値で12日(同日報告を除外すると40日)でした7。データは指数関数的な減少を示しており、最初の被害直後が最も再被害のリスクが高く、警察や支援団体が被害者を守るための介入は「最初の報告から2週間〜1ヶ月以内」に行うのが最適であると結論づけています。
- 同じ手口で繰り返し狙われる: 反復被害者は、前払い金型詐欺(Advance-fee fraud)やハッキングなど、最初と同じ種類の犯罪手口のターゲットにされ続ける傾向が顕著でした。
- 警察の記録ルールによる「見えない被害」の存在: 詐欺事件は、時間をかけて被害者との信頼関係を築き、何度も送金を要求するような手口が一般的です。しかし、警察の犯罪記録ルール(HOCR)上、被害者が何度もお金を振り込んでも「1つの事件」として記録されてしまうことがあり、実際の反復被害はデータに現れている以上に深刻である可能性が指摘されています。
この論文の社会への貢献
この論文の知見は、世界で急増しているSNS型投資詐欺や国際ロマンス詐欺の被害者支援・防犯対策にそのまま生かすことができます。特に「最初の被害発覚から2週間〜1ヶ月以内が最も危険」「同じ手口で再び狙われる」という明確なデータは、警察や金融機関、カウンセラーなどの専門家が連携し、被害直後のピンポイントな期間に集中して介入(口座凍結、セキュリティ強化、心理的ケアなど)を行うことの正当性を強く裏付けています。被害者を「騙されやすい人」と責めるのではなく、犯罪者がシステム化された手口で連続的に狙ってくる仕組みを理解し、社会全体で二次被害を未然に防ぐ「保護(Protect)」の枠組みを作るための強力なエビデンスとなります。
用語解説
- 反復被害(Repeat Victimisation)同一の個人または対象が、一定期間内に同じ種類の犯罪被害に複数回遭うことを指します。犯罪学においては、一度被害に遭った人は近い将来に再び被害に遭う確率が高いことが知られており、防犯リソースを集中させるべき重要な指標とされています。
- 前払い金型詐欺(Advance-fee fraud)「高額な利益(遺産、宝くじの当選金、融資など)を得られる」と持ちかけ、その利益を受け取るための手数料や税金などの名目で、事前に少額(あるいは中程度)の金銭を繰り返し騙し取る詐欺の手口です。ナイジェリアの手紙詐欺などが典型例です。
- データリンケージ(Data Linkage)異なるデータセットや記録の中に散在している情報の中から、同一の個人やエンティティ(実体)に関する記録を見つけ出し、紐付けるデータ処理技術のことです。本研究では、別々の犯罪報告書が同じ被害者によるものかを特定するために用いられました。
- HOCR(Home Office Counting Rules)英国の内務省が定める、警察が犯罪を記録・集計する際の公式なルールのこと。どのような行為を1件の犯罪としてカウントするかを規定しているため、このルール次第で統計上の犯罪件数や反復被害の割合が大きく変動する要因となります。
| タイトル | Patterns of online repeat victimisation and implications for crime prevention(日本語直訳:オンラインにおける反復被害のパターンと犯罪予防への示唆) |
| 類別 | Conference Paper |
| 筆者 | Sara Giro Correia(サラ・ジロ・コレイア)英国 スウォンジー大学 ロー・スクール(HRC School of Law Swansea University, Wales) |
| 雑誌名 | 2020 eCrime Researchers Symposium |
| 発行者 | IEEE |
| 発行日 | 16-19 November 2020 |
| 巻数・ページ | |
| 言語 | 英語 |
| URL | https://ieeexplore.ieee.org/document/9493258 |
| Cite | Correia, S. G. (2020). Patterns of online repeat victimisation and implications for crime prevention. 2020 eCrime Researchers Symposium (eCrime). |


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