Ririchan the “Grantee Gal”: Post-Feminism, Social Media, and the Celebrification of a Female Fraudster in Neoliberal Japan
「頂き女子」りりちゃん:新自由主義下の日本におけるポストフェミニズム、SNS、そして女性詐欺師のセレブリティ化
Yoko Demelius, Yutaka Yoshida
要約
本論文は、「頂き女子りりちゃん」こと渡邊真衣被告が、多額の詐欺罪で逮捕された後もなお、SNS上で熱狂的なファンを持つ「セレブリティ犯罪者」となった現象を分析しています。著者は、彼女が単なる犯罪者として「他者化」されるのではなく、むしろ現代日本の若い女性たちが抱える「新自由主義的な自立への圧力」と「強固なジェンダー階層」の間の葛藤を象徴する存在として受け入れられたと指摘します。彼女が戦略的に用いた「カワイイ」という女性性のパフォーマティビティと、SNSを通じた「救済者」としてのイメージ構築が、孤独や疎外感を感じる若者たちの共感を呼び、逸脱が「正常化」していく過程を解き明かしています。
研究方法
本研究は、以下の一次資料および二次資料を用いた定性的分析に基づいています。
- SNS・オンライン資料: 彼女のX(旧Twitter)アカウント「りりちゃんはホームレスです」やnoteの投稿、YouTube動画、および彼女が作成した「魔法のマニュアル」の分析。
- インタビュー: 彼女を支援するファンやサポーターへの直接インタビュー。
- メディア・出版物: 関連する報道記事、彼女を特集した雑誌『月刊頂き女子』、および公判記録や報道。
- 理論的枠組み: ジョック・ヤングの「逸脱の他者化」理論や、ポストフェミニズム、新自由主義に関する既存研究を用いた考察。
この研究で明らかになったこと
- 「カワイイ」の戦略的活用: 彼女は、日本の伝統的なジェンダー階層に適合する「無力で守られるべき存在」としてのカワイイ(ぶりっ子)を戦略的に演じることで、男性から資金を引き出すだけでなく、その「弱さを武器にする強さ」がポストフェミニズム的なエンパワーメントとして同性に解釈されました。
- 「救済者」としてのアイデンティティ: 彼女はSNS上で自分を「神」や「魔法少女」と称し、同じように性産業やホストクラブへの借金で苦しむ女性たちに「救済」の手を差し伸べる姿勢を見せることで、強い「シスターフッド(女性同士の連帯)」を構築しました。
- 逸脱の正常化: 彼女への支持は、単なる犯罪への賛同ではなく、現代社会の機能不全(孤独、家族の崩壊、経済的不安)を共有する者同士の「共感」に基づいています。これにより、犯罪という極端な逸脱行為が、過酷な社会を生き抜くための「戦略」としてファンに内面化されました。
この論文の社会への貢献
この研究は、日本の犯罪対策や被害者支援、カウンセリングに携わる専門家に対し、重要な視点を提供します。
- 孤独と孤立への着目: 犯罪の背景には、コロナ禍で加速した深刻な孤独と、既存の福祉からこぼれ落ちた若者の孤立があることを浮き彫りにしました。
- ジェンダー格差の構造的問題: 「頂き女子」現象を個人の道徳の問題として切り捨てるのではなく、女性が経済的自立を果たすことが困難な社会構造や、搾取的なホストクラブの問題と密接に関わっていることを示しました。
- デジタル時代の犯罪理解: SNSが伝統的なメディアを介さず、犯罪者と支持者の間に直接的な双方向コミュニケーションを可能にし、犯罪を「物語化」して消費する新たな文化圏を作り出している現状を警告しています。
| タイトル | Ririchan the “Grantee Gal”: Post-Feminism, Social Media, and the Celebrification of a Female Fraudster in Neoliberal Japan |
| 類別 | Research Note |
| 筆者 | Yoko Demelius(トゥルク大学 東アジア研究センター)Yutaka Yoshida(カーディフ大学 社会科学部) |
| 雑誌名 | Asia-Pacific Journal: Japan Focus |
| 発行者 | Published online by Cambridge University Press |
| 発行日 | 25 November 2025 |
| 巻数・ページ | Published online |
| 言語 | 英語 |
| URL | https://doi.org/10.1017/apj.2025.10024 |
| Cite | Demelius, Y., & Yoshida, Y. (2025). Ririchan the “Grantee Gal”: Post-Feminism, Social Media, and the Celebrification of a Female Fraudster in Neoliberal Japan. Asia-Pacific Journal: Japan Focus, 23(e21), 1–6. https://doi.org/10.1017/apj.2025.10024 |


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