加害者側から見るロマンス詐欺の手口

犯罪学
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Modelling the modus operandi of online romance fraud: Perspectives of online romance fraudsters
Yushawu Abubakari

要約

この本論文は、ガーナ人の社会学者、Abubakari先生の研究で、ガーナのオンラインロマンス詐欺師27名への聞き取りと観察から、欧米の被害者をだます「手口の流れ」を7段階でモデル化しました。偽プロフィール作成→事前調査→信頼形成→金銭要求→もっともらしさの再構築→被害者の協力者化→放棄、という一連のプロセスを、加害者視点で具体化。地域の文化・信仰(呪術的実践)が各段階に組み込まれる点も示しました。


研究の進め方

本研究は、ガーナで活動中のロマンス詐欺師27名(男性15・女性12)を対象にした民族誌(エスノグラフィー)です。
データ収集は2021年9月〜2022年12月に実施。非構造化・半構造化インタビューと観察を組み合わせ、観察は1回あたり約3時間、1人あたり平均4回のインタビューを行っています。
参加者募集は、知人・仲介者を起点に対象が連鎖的に広がるスノーボールサンプリングに加え、違法行為者への研究で同意を得るため、関係性を丁寧に作る「方法論的グルーミング」を用いました。分析は、発言や観察メモを「意味のまとまり」で分類していく質的テーマ分析(段階的にコード化→テーマ化)で、最終的に7段階のモデルへ整理し、当事者にも妥当性確認をしています。

国際ロマンス詐欺の7段階

結論の核は、ロマンス詐欺が“場当たり”ではなく、相互に連結した7段階のプロセスとして運用されている点です(全員が全段階に進むとは限らない)。

①偽プロフィール:欧米人(軍人・ビジネスパーソン等)を装い、反応率を上げる。人種・国籍の先入観を逆手に取り「欧米の同質性」に寄せます。

②事前調査:SNS等から年齢・婚姻状況・趣味を調べ、特に孤独や喪失の刺さりどころを見つけます。

③信頼形成:共感・褒め言葉・個別最適化した会話で心理的距離を詰め、より親密な連絡手段へ誘導します(詐欺師側ではパッケージングと呼ぶ)。

④金銭要求:病気・事故・関税・渡航費など危機・緊急性を演出し送金させます。

⑤もっともらしさ再構築:疑われたら、より熟練者に引き継ぎ(「send for business」)、偽IDや録画ビデオ通話などで信憑性を補強します。

⑥被害者の協力者化:送金役(マネーミュール)だけでなく、機材購入や電話支援など“運営側”に取り込むことがある点が特徴です。

⑦放棄:得られる利益が尽きると連絡断ち・ブロック・死亡偽装などで終結。植民地史を持ち出して罵倒し精神的打撃を与える例も語られます。

また途中で「Go legit(詐欺から本当の関係へ切替)」という分岐も示され、告白・謝罪して関係継続を試みるケースが報告されています。

社会への示唆

本研究の貢献は、被害者側では見えにくい運用のリアルを、加害者視点の一次データでモデル化した点です。特に、ガーナ等で「Sakawa」と呼ばれるスピリチャル文化があり、デジタル技術と呪術的実践を組み合わせるテクノ・スピリチュアルが、信頼形成だけでなく事前調査や選別にも入り込む可能性が示されました。
実務的には、(a) 個人は「会ったことのない相手に送金しない」を徹底、(b) プラットフォーム企業は本人確認強化や不審行動検知の仕組み、(c) 啓発は西側だけでなく加害側社会も含めた道徳・文化面の教育が重要、と提言しています。
一方で、対象がガーナ中心で人数も限定的なため、他地域・別ターゲットにそのまま当てはめるには追加研究が必要、という限界も明記されています。


タイトルModelling the modus operandi of online romance fraud: Perspectives of online romance fraudsters
類別Journal Article
筆者Abubakari Y University of Wroclaw, Faculty of Social Sciences, Poland
雑誌名Journal of Economic Criminology
発行者Elsevier BV
発行日December 2024
巻数・ページ6(100112)
言語英語
URLhttps://doi.org/10.1016/j.jeconc.2024.100112
CiteAbubakari, Y. (2024). Modelling the modus operandi of online romance fraud: Perspectives of online romance fraudsters. Journal of Economic Criminology, 6, Article 100112. https://doi.org/10.1016/j.jeconc.2024.100112

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