「国際ロマンス詐欺」という言葉は、現在、非常に広い範囲の犯罪を包含する言葉として定着していますが、その中身は時代とともに変容しており、定義や分類においていくつかの課題を抱えています。厳密にいうと、国際恋愛が詐欺だった場合であれば相手がバーチャルであってもリアルであっても、そのリアルが同じ地域内で起きていても国境を越えていても、「国際ロマンス詐欺」と言ってもおかしくはありません。
国際ロマンス詐欺の定義と歴史
定義
一般的には、「インターネット(SNSやマッチングアプリ等)を通じて知り合った海外の相手(あるいは海外在住を自称する者)が、恋愛感情や親愛の情を抱かせ、その信頼を利用して金銭を騙し取る行為」を指します。
歴史(いつ頃から使われているか)
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起源: ルーツは1980年代から存在する「ナイジェリア手紙(419詐欺)」にあります。当時は郵便やFAXでしたが、2000年代にメールが普及したことで効率化されました。日本のBBSやブログで散見し始めたのも2010年前後です。
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用語の定着: 日本で「国際ロマンス詐欺」という言葉がメディアや警察の注意喚起で頻繁に使われ始めたのは、2010年代中盤(2015年〜2018年頃)です。
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転換点: 2020年以降、パンデミックによる孤独感の増大と資産運用ブームが重なり、被害額が爆発的に増加しました。
用語の曖昧さと手口の変遷
「国際ロマンス詐欺」という名称は、現在以下の2つの異なる手口を混同して使われているため、非常に曖昧になっています。
前払金型(古典的ロマンス詐欺:2008年頃〜)
「あなたに会いたい」「結婚したい」と言いつつ、金銭を要求するパターンです。
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名目: 「日本へ行く航空券代」「あなたに送ったプレゼントの関税・通関手数料」「身内が急病」など。
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特徴: 恋愛感情そのものが「商品」であり、金銭の授受は直接的な送金(銀行振込やプリペイドカード)です。
投資勧誘型(SNS型投資ロマンス詐欺:2020年頃〜)
近年主流となっている、恋愛を「きっかけ」にするだけで、中身は投資詐欺であるパターンです。
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名目: 「二人の将来のために資産を増やそう」「特別な投資サイトがある」。
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特徴: 偽の投資プラットフォームに誘導し、数字上は儲かっているように見せて高額な入金を促します。
警察統計における「MECE」の欠如
現在、日本の警察庁は統計上の区分を整理していますが、現場レベルや過去のデータでは、以下の理由からMECE(漏れなく、重複なく)な分類ができていないという問題があります。
分類を困難にしている要因
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「恋愛要素」の有無が主観的:
相手に「好きだ」と言われればロマンス詐欺、言われずに「儲かる」とだけ言われれば投資詐欺と分類されることがありますが、その境界線はグラデーション(例:少し親しくなった程度)であり、明確な切り分けが困難です。
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目的(投資)と手段(ロマンス)の混同:
「SNS型詐欺」という大きなカテゴリーの下に、「SNS型投資詐欺(恋愛なし)」と「SNS型ロマンス詐欺」というサブカテゴリ―があります。つまりは本質的には「SNS型投資詐欺」と同じ「SNS型投資ロマンス詐欺」が、前払金型ロマンス詐欺と同じ「SNS型ロマンス詐欺」のカテゴリーに入れられており、「前払金型」と「投資型」が混ざっている・「投資型」が恋愛ありとなしで分断されているため、原因分析や対策の立案にノイズが生じています。
まとめ
「国際ロマンス詐欺」は、もはや単一の手口を指す言葉ではなくなっています。2008年頃からある「前払金型」と、近年の「投資型」を同じカテゴリーで扱うことは、被害対策の現場においては「対症療法が全く異なる病気を、同じ『腹痛』として処理している」ような危うさがあります。