Fraud as Legitimate Retribution for Colonial Injustice: Neutralization Techniques in Interviews with Police and Online Romance Fraud Offenders
Suleman Lazarus, Mariata Hughes, Mark Button, Kaina Habila Garba
要約
Lazarus Suleman先生らのグループが、ガーナ・アクラで国際ロマンス詐欺の実行者(13人)と捜査側の警察官(5人)に聞き取りを行い、詐欺をどう「正当化」するかを分析した研究です。詐欺師は貧困や失業、さらには植民地支配の歴史を持ち出し「奪われた富を取り返す報復・補償だ」と語る。一方で警察側も資源不足などを理由に対応困難を説明し、双方が中和技法を使う実態が示された。
研究の進め方
本研究は、オンライン恋愛詐欺(いわゆる「Sakawa Boys」)を加害者側と取り締まる側の両面から理解するための質的研究です。舞台は西アフリカのガーナ首都アクラで、参加者は全員男性。内訳は、詐欺実行者13人への半構造化インタビュー、警察官5人(うち2人は個別インタビュー、3人はフォーカスグループ)です。詐欺師は主にインターネットカフェ関係者の紹介で募り、警察官はスノーボール・サンプリング(紹介の連鎖)で協力者を広げています。
分析は、録音→逐語録化→Braun & Clarkeの主題分析でテーマを抽出。コーディングは研究者間で一部を相互確認し、食い違いは協議して整合性を担保しています。
理論の柱は、犯罪者が罪悪感を弱めるために使う言い訳の型を整理した中和技法(Sykes & Matza)です。代表例として「責任の否認」「非難者への非難」「より高い忠誠への訴え」などを参照し、詐欺師と警察官がそれぞれどんな語りで行為や不作為を説明するのかを読み解きます。ポイントは、単に「加害者が悪い」で終わらせず、当事者が置かれた文化・社会状況の中で、どんな理屈が“もっともらしく”機能しているかを見る設計になっているところです。
分かったこと
結論は大きく3つの“正当化パターン”です。
1つ目は「責任の否認」。詐欺師は「貧困」「失業」「学歴・機会の不足」など、個人の努力ではどうにもならない外部要因に原因を置き、詐欺を“追い込まれた選択”として語ります。興味深いのは、警察官側もまた「装備や技術の不足」「国際機関との連携の難しさ」を挙げ、取り締まりが進まない理由を外部制約で説明する点です。つまり、立場は真逆でも「自分の責任だけではない」という語りが出てきます。
2つ目は「非難者への非難」。詐欺師は、警察が賄賂や癒着で機能不全に陥っていることを持ち出し、「あの人たちも汚いのに、何を裁くのか」という論法で、批判の正当性そのものを崩します(腐敗が免罪符として働く)。
3つ目が本論文の核である「より高い忠誠への訴え(植民地の遺産)」です。詐欺師は詐欺を、単なる金儲けではなく「植民地支配で奪われた富を取り返す“修復的正義(reparations)”」のように位置づけます。警察官側も、被疑者がそう語る実態を認め、状況によっては同情が入り込みうることを示唆しています。この語りは「被害者を出している犯罪」という事実を消すものではありませんが、“本人の中では道徳的に整合してしまう理屈”が、歴史認識と接続している点が重要です。
社会への示唆
この研究の貢献は、恋愛詐欺を「個人の悪意」だけで片づけず、言い訳が成立してしまう社会条件まで含めて対策を考える材料を増やしたことです。まず実務面では、詐欺師が用いる“物語”(貧困、尊厳、植民地の記憶)を理解することで、捜査・啓発・コミュニティ連携の設計がより現地文脈に合ったものになり得ます。また、警察内部の腐敗が抑止力を壊し、結果として詐欺の温床になる点が示されており、反腐敗の制度設計や国際連携の改善が「サイバー対策」と表裏一体だと分かります。
理論面でも、従来の中和技法に「植民地の遺産」という長期の歴史物語が組み込まれ、犯罪が道徳的に言語化される様子を具体例で示しました。中和技法は普遍的なテンプレではなく、社会史的な現実に合わせて形を変える――この示唆は、国際的に被害が拡大するロマンス詐欺を理解するうえで大きいです。
なお限界として、サンプルが主にインターネットカフェ経由の紹介で、別ルート(スマホ中心等)の実行者が抜ける可能性、質的研究ゆえ一般化を目的にしない点、そして女性研究者×男性参加者というジェンダー力学が語りに影響しうる点が明記されています。
| タイトル | Fraud as Legitimate Retribution for Colonial Injustice: Neutralization Techniques in Interviews with Police and Online Romance Fraud Offenders |
| 類別 | Journal Article |
| 筆者 | Suleman Lazarus, University of Surrey, Guildford, UK;b London School of Economics and Political Science (LSE), London, UK;c University of the Western Cape, Cape Town, South AfricaMariata Hughes University of Surrey, Guildford, UKMark Button, University of Portsmouth, Portsmouth, UKKaina Habila Garba Economic and Financial Crimes Commission (EFCC), Abuja, Nigeria |
| 雑誌名 | Deviant Behavior |
| 発行者 | Informa UK Limited |
| 発行日 | Jan 16, 2025 |
| 巻数・ページ | 1-22 |
| 言語 | 英語 |
| URL | https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/01639625.2024.2446328 |
| Cite | Lazarus, S., Hughes, M., Button, M., & Garba, K. H. (2025). Fraud as Legitimate Retribution for Colonial Injustice: Neutralization Techniques in Interviews with Police and Online Romance Fraud Offenders. Deviant Behavior, 1–22. https://doi.org/10.1080/01639625.2024.2446328 |


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