なぜ「自分だけは大丈夫」が危ないのか?SNS型投資・ロマンス詐欺の巧妙な心理トリックを専門家が徹底解説

犯罪予防
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SNS型投資・ロマンス詐欺の欺罔プロセスと対策に関する認知・社会心理学的考察
英語:Cognitive and Social Psychological Considerations on the Deception Process and Countermeasures for SNS-based Investment and Romance Scams

木村 敦

要約

近年被害が急増している「SNS型投資・ロマンス詐欺」は、従来の特殊詐欺とは異なり、時間をかけた「段階的な信頼関係の構築」を基盤としています。本論文は、認知・社会心理学の観点から、なぜ人は詐欺だと気づけないのか、なぜ被害が拡大してしまうのかというメカニズムを解き明かしています。著者は、「手口を知っているだけで防げる」という過信を戒め、日常のコミュニケーションにおける「ヒヤリハット」の省察や、社会全体での被害者非難の抑制が、実効性のある対策につながると提言しています。

研究方法

本研究は、警察庁が公表している最新の被害統計資料を分析するとともに、認知心理学や社会心理学の既存理論(確証バイアス、プロスペクト理論、公正世界信念など)を枠組みとして用いた理論的考察です。従来の特殊詐欺との比較を通じて、SNSという非対面ツール特有の欺罔(ぎもう)プロセスの特徴を浮き彫りにしています。

この研究で明らかになったこと

「信頼の構築」を重視するプロセス: 従来の詐欺が「動揺」を誘うのに対し、SNS型詐欺は時間をかけて信頼関係を築くため、一度信じてしまうと「詐欺である可能性」への注意が向きにくくなります(復帰抑制や確証バイアスの影響)。

「自分は騙されない」という罠: 約67%の人が持つ「楽観バイアス」により、手口を知っていても「自分なら見抜ける」と過信し、不審な接触を続けてしまうリスクが指摘されています。

被害が拡大する心理メカニズム: 「損失回避」や「サンクコスト効果」により、一度送金すると「損を取り戻したい」という心理が働き、一人あたりの被害額が数千万円規模に膨らみやすくなります。

被害者非難の弊害: 社会に存在する「自業自得」とみなす風潮(公正世界信念)が、被害者の相談を遅らせ、さらなる被害拡大を招く要因となっています。

この論文の社会への貢献

本論文は、個人の防犯意識を高めるだけでなく、社会全体の支援体制のあり方に一石を投じています。特に、産業安全の知見である「ハインリッヒの法則」を詐欺対策に応用し、日常の断りづらい経験などを「ヒヤリハット」として捉え直す手法を提案した点は画期的です。また、警察やメディア、支援団体に対し、被害者を責めない姿勢が「早期相談・被害最小化」の鍵であることを論理的に示した点は、実務において極めて重要な指針となります。


タイトルSNS型投資・ロマンス詐欺の欺罔プロセスと対策に関する認知・社会心理学的考察
類別紀要論文 
筆者木村 敦(日本大学危機管理学部 教授)
雑誌名日本大学危機管理学部『危機管理学研究』
発行者日本大学危機管理学部危機管理学研究所
発行日2025年
巻数・ページ第9号,pp42-57.
言語日本語
URLhttps://www.crm.nihon-u.ac.jp/media/202503_kimura02.pdf
Cite木村敦. (2025). SNS型投資・ロマンス詐欺の欺罔プロセスと対策に関する認知・社会心理学的考察. 危機管理学研究, 9, 42-57

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