Tainted Love: a Systematic Literature Review of Online Romance Scam Research
Alexander Bilz, Lynsay A. Shepherd, Graham I. Johnson
概要
オンライン恋愛詐欺(ロマンス詐欺)の研究を、PRISMA手順で体系的に整理したレビュー論文です。10の学術DB等から文献を集め、279本をスクリーニング、107本を精査し、最終的に53本を分析対象にしました。詐欺の典型プロセスや詐欺師プロフィールの特徴、被害者・加害者に関わる要因、そして技術的/非技術的な対策研究を俯瞰し、研究の不足点(データ不足、実証研究の少なさ、実運用しづらい対策など)と今後の課題を示しています。
研究手法
本論文は英国のAbertay大学のAlexander Bilz先生らの研究グループによるシステマティック・レビュー論文です。手順はPRISMAに沿い、2023年4月時点でScopus、Web of Science、ProQuest、ACM DL、IEEE DL、ScienceDirect、PubMedなど計10のデータベースを横断検索し、さらに参考文献の追跡やGoogle Scholarアラートも併用しています。集めた文献は管理ツール(Covidence)で重複除去と段階選別を行い、334本を同定→重複55本除外→タイトル/要旨で172本除外→107本を全文精査→最終53本という流れです。また、各論文から「研究デザイン(質的/量的/混合)」「対象国」「サンプル(例:被害者インタビュー、投稿データ、アプリの行動ログ等)」「理論枠組み」「主要知見」をテンプレで抜き出し、RQ1〜RQ3(①詐欺のプロファイル化、②促進要因、③対策)に沿って分類・統合しています。
わかったこと
このレビューが整理した“全体像”は大きく3つです。
1つ目は、詐欺が進む「型」です。古典的には「偽プロフィール作成→信頼形成→金銭要求」の3段階が語られ、より詳しいモデルでは「理想の相手として提示→グルーミング(信用づくり)→送金要求→(場合により)性的搾取→発覚」など、被害者心理の移り変わりまで段階化されています。
2つ目は、プロフィールと説得のテクニックです。詐欺師は“魅力的に見える自己紹介”を作り込み(職業・成功・信仰・悲劇の物語など)、早い段階でアプリ外(メールや外部メッセージ)へ誘導し、監視や通報を避けやすくします。研究では、文面の構造が「丁寧で形式的→親密化(宗教・称賛・相手最優先の言い回し)→金銭要求前の“恩義/感謝”の強調」といった段階で変化することも指摘されています。
また、発信地推定の研究ではナイジェリア30%、ガーナ13%、マレーシア11%など地域差が示されますが、地域別の実証はまだ不足とも述べています。
3つ目は、被害の二重苦と、要因研究の難しさです。被害は金銭だけでなく、羞恥・自己責任感・心身不調など感情面の打撃が大きい(いわゆるダブルヒット)ことが繰り返し確認されています。一方で「誰が狙われやすいか」は、性別・年齢・教育・性格傾向など候補が挙がるものの、結果が割れていたり統計的に強くないものが多く、断定的な“被害者像”は作りにくい、という結論です。
社会への示唆・貢献
この研究の貢献は、「国際ロマンス詐欺対策」を個人の注意力だけに丸投げしないための設計図を提示した点にあります。
- 実務で効く“観点”を整理:詐欺の進行モデル、会話の段階変化、外部チャネル移動など、現場でチェックしやすいポイントを研究横断でまとめています。
- 技術対策の現実的な課題を明確化:技術的対策研究は6本と限られ、画像・プロフィール文・行動特徴・打鍵などの特徴量で検知を試みています。アンサンブル分類器が単体より良い可能性、標準データセットやAPIでの共有の必要性が示される一方、一般利用者が“デート中に使える形”になっていない(導入が面倒、ツールが分断)という壁もはっきり書かれています。
- 啓発の作り方まで踏み込む:「危ない行動リスト」だけではなく、自己効力感(自分は見抜ける/対処できる)を高める訓練や、被害者支援・警察対応の重要性を強調しています。つまり“検知”と“ケア”をセットで考える方向に背中を押しています。
| タイトル | Tainted Love: a Systematic Literature Review of Online Romance Scam Research |
| 類別 | Journal Article |
| 筆者 | Alexander Bilz Lynsay A. Shepherd Graham I. Johnson School of Design and Informatics, Division of Cyber Security, Abertay University, UK |
| 雑誌名 | Interacting with Computers |
| 発行者 | Oxford University Press |
| 発行日 | November 2023 |
| 巻数・ページ | Volume 35, Issue 6, Pages 773–788 |
| 言語 | 英語 |
| URL | https://doi.org/10.1093/iwc/iwad048 |
| Cite | Bilz, A., Shepherd, L. A., & Johnson, G. I. (2023). Tainted love: A systematic literature review of online romance scam research. Interacting with Computers, 35(6), 773–788. https://doi.org/10.1093/iwc/iwad048 |


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