詐欺被害者ピアサポートの効果

被害者学
被害者学被害者支援

You’re not alone”: the use of peer support groups for fraud victims

Cassandra Cross

要約

詐欺被害は金銭だけでなく心身の健康や人間関係、生活基盤まで傷つけ得る一方、支援サービスは十分でないとされます。本研究は西オーストラリアで2014年末に始まった詐欺被害者限定の対面ピアサポートを事例に、開始前と開始後1年以上の2時点で被害者へ聞き取りを実施。孤立の緩和や「自分だけではない」という安心が得られる一方、参加のハードルや運営上の摩擦も確認され、支援設計の重要点が整理されました。


研究方法~2時点インタビュー

この論文はオーストラリアのクィーンズランド工科大学、Cassandra Cross先生による研究で「まず小さく実態をつかむ」探索的ケーススタディです。対象は、対面サポートグループへの参加予定者/参加者への半構造化インタビュー。2014年7月に6名へ事前聞き取り→グループは2014年末に開始→2016年2月に、当初の4名+新規3名の計7名へ事後聞き取り、合計9名分の語りを集めました。

分析は、録音を文字起こしして質的分析ソフトNVivoでテーマ別に整理(既存研究の論点と照合しつつコーディング)しています。

参加者の特徴として、9名は男女混在(女性が多め)で、主に50代以上。全員がロマンス詐欺被害でした。
※著者も限界として、サンプルが小さく一般化は難しい点、自己選択(話せる人が参加しやすい)などを明記しています。


明らかになったこと~効く点と難点

得られやすいメリット

  • いちばん大きいのは「自分だけじゃない」という感覚です。詐欺は被害者が恥や自己責任感を抱え、周囲に言えず孤立しやすい。そこに同じ経験者がいるだけで、安心して話せる土台ができます。
  • 体験の共有は、感情の整理にもつながります。被害直後は「怒り・涙・混乱」が揺り戻しのように来ますが、経験者から「その反応は自然」と言われることで回復の道筋が見えやすくなります(語りのテーマとして整理)。

運営で詰まりやすいポイント

  • 参加者が安定して集まりにくい(少人数・入れ替わりが激しい)と、関係性が育ちにくく「支援されている感」が弱まります。
  • 初参加の心理的ハードルが高い(順番に話す形式が「次は自分」と緊張を増やす等)。
  • 場所や交通(駐車・費用など)の“小さな障壁”が、ただでさえ不安な被害者の参加を止めてしまうことがある。
  • 期待のズレが火種になります。たとえば「お金を取り戻す方法を教えてほしい」といった期待が強いと、グループ本来の目的(心理的回復支援)と噛み合わず、不満や緊張を生みます。

社会への貢献~支援設計のヒント

この研究の価値は、「詐欺被害者支援は必要だ」と言うだけでなく、何が効き、何が詰まるのかを当事者の言葉から具体化した点にあります。詐欺は金銭被害に目が行きがちですが、健康・感情・生活に深刻な二次被害が起き得るため、回復支援の設計が欠かせません。

実務的には、たとえば次のような示唆を与えます。

  • 立ち上げ時ほど“参加しやすさ”を最優先(会場アクセス、費用、参加の手順)。
  • 期待値調整を明文化(返金支援の場ではない/ここで得られるのは感情面・情報面・実践面の支え)。
  • 詐欺特有のリスクにも注意。オンライン支援は便利でも、被害者がオンラインで騙された経験を持つ以上、不信や再標的化(“狙われやすさ”)への配慮が必要だと指摘しています。

また重要な現実として、執筆時点ではオーストラリア国内の対面PSGが停止していたとされ、支援の継続性の課題も浮き彫りになっています。


タイトル“You’re not alone”: the use of peer support groups for fraud victims
類別Journal Article
筆者Cassandra Cross
Queensland University of Technology, Brisbane, Australia
雑誌名Journal of human behavior in the social environment
発行者Informa UK Limited
発行日Jul 04, 2019
巻数・ページ29(5), 672–691.
言語英語
URLhttps://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/10911359.2019.1590279https://doi.org/10.1080/10911359.2019.1590279
CiteCross, C. (2019). “You’re not alone”: the use of peer support groups for fraud victims. Journal of Human Behavior in the Social Environment, 29(5), 672–691. https://doi.org/10.1080/10911359.2019.1590279

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