詐欺に遭いやすい人の特徴とは?性格やメンタルとの意外な関係

詐欺に遭いやすい人の特徴とは? 被害者学
詐欺に遭いやすい人の特徴とは?
被害者学論文解説

Risk factors for fraud victimization: The role of socio-demographics, personality, mental, general, and cognitive health, activities, and fraud knowledge(詐欺被害のリスク要因:社会人口統計、性格、精神的・一般的・認知的健康、活動、および詐欺知識の役割)
Luka Koning, Marianne Junger, Bernard Veldkamp

要約

オランダ・トゥウェンテ大学のLuka Koning先生らの研究チームは、どのような人が詐欺被害に遭いやすいのかを解明するため、オランダの代表的なパネル調査に参加した2,864名のデータを分析しました。本研究の独自性は、詐欺被害を「標的になる(曝露)」段階と「騙される(感受性)」段階に分け、被害発生「前」の性格テストや生活習慣のデータを用いて因果関係を探った点にあります。分析の結果、「特定の性格やメンタルの不調が詐欺被害を引き起こす」という証拠はほぼ見つからず、例外的に「セルフコントロールの低さ」と「長時間のインターネット利用」が強い被害リスクとなることが判明しました。

研究方法

本研究の目的は、個人のどのような特性が詐欺被害のリスクを高めるのかを明らかにし、効果的な被害防止策を構築することです。

対象となったのは、オランダ統計局の人口登録から無作為抽出された「LISSパネル」に参加する2,864名です。このサンプルの強みは、年齢や性別、インターネットの利用スキルに偏りがない、国を代表するデータである点です。

調査手法として、本研究は詐欺被害を単一の出来事としてではなく、詐欺の試みに遭遇する(曝露)ことと、それに騙されて被害に遭う(感受性)ことの2段階プロセスとして捉えました。そして、投資詐欺やフィッシングなど10種類の詐欺について、2020年の被害状況を尋ねています。

さらに、単なるアンケート結果の相関ではなく原因と結果の関係(因果関係)に迫るため、詐欺被害に遭う前(2019年以前)に測定された膨大な背景データ(性別・年齢・収入、性格特性、精神的健康状態、インターネットの利用時間など)を使用しています。これらのデータに対し、多重代入法を用いて欠損値を補完した上で、二項ロジスティック回帰分析を行い、それぞれの要因が詐欺への遭遇や実際の被害にどう影響しているかを網羅的に検証しました。

この研究で明らかになったこと

膨大なデータの分析から、一般的に信じられている「詐欺被害者像」を覆す、いくつかの重要な事実が明らかになりました。

性格やメンタルの状態は詐欺被害とほぼ無関係

私たちは「外向的な人は騙されやすい」「孤独やストレスで精神的に弱っていると詐欺に引っかかる」と考えがちですが、本研究では、性格特性(外向性、協調性、誠実性など)や、幸福感・生活満足度といった精神的健康は、詐欺被害のリスクとほぼ関係がないことがわかりました。

セルフコントロールの低さが最大のリスク要因

唯一、明確なリスク要因として確認された性格特性が「セルフコントロール(自己統制力)」です。衝動的でリスクを取りやすい人は、投資詐欺やロマンス詐欺など、ほぼすべての詐欺カテゴリにおいて被害に遭う確率が高く、詐欺の手口に対しても騙されやすい(感受性が高い)ことが示されました。

インターネット利用時間が長いほど危険

日常的な活動要因として、インターネットの総利用時間やオンラインショッピングの利用時間が長い人ほど、様々な詐欺に遭遇しやすく、結果として被害に遭うリスクが高いことが示されました。これは「危険な環境に長く居るほど犯罪に巻き込まれやすい」という日常活動理論を裏付けるものです。

非西洋系の移民背景を持つ人のリスクが高い

性別、年齢、収入や学歴といった一般的な社会人口統計要因による大きな差は見られませんでしたが、非西洋系の移民背景を持つグループは、投資詐欺、当選金詐欺、架空請求、フィッシングなど複数の詐欺において被害に遭うリスクが有意に高いことが判明しました。

詐欺の手口を知っているだけでは被害をゼロにできない

事前に詐欺の手口を知っている(詐欺知識がある)ことは、詐欺の罠に引っかかる(感受性)のを減らす効果はありましたが、一般的な詐欺被害そのものを大きく減らす決定打にはなりませんでした。知識がある人は詐欺の試みに気づきやすく記憶に残りやすいため、「詐欺に遭遇した」と報告する件数が多い傾向も見られました。

この論文の社会への貢献

この論文は、詐欺被害を個人の性格の弱さやメンタルの不調のせいにする自己責任論に対して、科学的なデータを用いて明確に反証した点で、非常に大きな社会的意義を持っています。多くの人は自分はしっかりした性格だから大丈夫・精神的に安定しているから騙されないと過信しがちですが、実際には、インターネットを日常的に使う現代人であれば誰もが詐欺のターゲットになり得るという事実が浮き彫りになりました。

唯一のリスク性格であるセルフコントロールに関しても、大人になってから急に鍛え直して詐欺を防ぐというのは現実的な対策とは言えません。

本研究が社会に投げかける最大のメッセージは、詐欺防止の責任を、個人の自助努力にのみ押し付けるべきではないということです。手口に対する知識を普及させる啓発活動は個人の防衛力を高める上で意味がありますが、それ以上に重要なのは、個人が詐欺にアクセスしてしまう環境そのものを変えることです。決済サービス、通信事業者、SNSプラットフォームなどのサービス提供者が、システムレベルで詐欺をブロックする対策を強化することこそが、抜本的な解決策となります。

最後になりますが、被害者支援団体や医療関係者の方々にとっても、被害者には特別な落ち度や性格的欠陥があったわけではないという本知見は、被害者の自責の念を和らげ、心理的ケアを行うための確固たるエビデンスとして活用できるはずです。

用語解説

・セルフコントロール (Self-control)自身の思考、感情、行動、欲望を自制し、長期的な目標のために目先の誘惑や衝動を抑える能力のことです。犯罪学において、この能力が低い(=衝動的、リスクを好む)ことは、犯罪の加害者になるだけでなく、被害者になるリスクも高めるとされています。

・ビッグ・ファイブ (Big Five)心理学において最も広く受け入れられている性格の分類モデルで、人間の性格を「外向性」「協調性」「誠実性」「神経症的傾向(情緒不安定性)」「開放性(新しい経験への関心)」の5つの基本的な因子で説明するものです。

・二項ロジスティック回帰分析 (Binary logistic regression)ある出来事が「起きる」か「起きないか」(例:詐欺の被害に遭った/遭わなかった)という2択の結果に対して、年齢やインターネット利用時間など、さまざまな要因がそれぞれどの程度影響を与えているかを統計的に予測・分析する手法です。

・曝露(Exposure)と感受性(Susceptibility)本研究における独自の被害プロセスの捉え方です。「曝露(ばくろ)」は詐欺師からのアプローチや詐欺サイトに遭遇するなど、詐欺の標的になることを指します。「感受性」は、実際に詐欺に遭遇した人の中で、詐欺師の嘘を信じ込んでしまったり、要求にお金を払ってしまったりする(=騙されやすさ)ことを意味します。


タイトルRisk factors for fraud victimization: The role of socio-demographics, personality, mental, general, and cognitive health, activities, and fraud knowledge(詐欺被害のリスク要因:社会人口統計、性格、精神的・一般的・認知的健康、活動、および詐欺知識の役割)
論文の種類ジャーナル論文
論文の分野被害者学、犯罪学、サイバー心理学
著者Luka Koning, Marianne Junger, Bernard Veldkamp(オランダ・トゥウェンテ大学)
論文誌名・発行者International Review of Victimology(SAGE)
発行日・巻数・ページ2024年, Vol. 30, Issue 3
原著論文の言語英語
URLhttps://journals.sagepub.com/doi/10.1177/02697580231215839
CiteKoning, L., Junger, M., & Veldkamp, B. (2024). Risk factors for fraud victimization: The role of socio-demographics, personality, mental, general, and cognitive health, activities, and fraud knowledge. International Review of Victimology, 30(3), 443–479. https://doi.org/10.1177/02697580231215839

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